
【実践レポート】AIチャットボット導入
はじめに
私たちネオレックスが提供しているiPad向け勤怠管理アプリ「タブレット タイムレコーダー」の製品Webページに、AIチャットボットを導入しました。
本コラムでは、AIチャットボット導入の背景から検討、実装、運用までのプロセスを振り返ります。
同じようにAI活用を検討している方にとって、少しでも参考になれば嬉しいです。
導入の背景:AIを活用してみたい+ユーザビリティの向上
導入の背景として、まず一つは、会社としてAIを活用したいという意欲です。社内ではChatGPTなどを個人で活用しているメンバーもいましたが、会社としてもプロダクトにAIを活用していきたいという思いがありました。
「まずは気軽に始められそうなものから検討していこう」という前向きな機運から検討がスタートしました。
もう一つの目的は、「タブレット タイムレコーダー」のユーザビリティ向上です。
製品Webページに各種情報を記載していますが、ユーザーが「知りたいこと」にスムーズにたどり着くには限界もあります。
また、メールやサポートフォーラム経由のお問い合わせでは、営業時間等の都合からすぐに回答できないケースもありました。
そこで、「AIチャットボットを導入すれば、より直感的かつ気軽に、製品情報にアクセスしてもらえるのではないか?」という期待がありました。
検討プロセス:まずは情報収集から
AIチャットボットといっても、ゼロから構築するとなると技術的・コスト的な負荷は大きくなります。そこでまずは、既存のAIチャットボット向けプラットフォームや製品を調査。
手軽に試せそうなツールがいくつか見つかり、それぞれの製品についてトライアルを行ったり、取り扱っている企業の方とのオンラインミーティングを通じて情報を整理しました。
比較検討の際は、以下のような観点で評価を進めました。
- 学習させる情報の量と構造の複雑さ
- 製品価格とコストパフォーマンス
- 想定される利用頻度
- 実装のしやすさ、サポート体制
中には画像や音声など複雑な情報の扱いが得意なもの、UIがシンプルで使いやすさに長けているものなど様々でしたが、「タブレット タイムレコーダー」に最適なツールを選定しました。
構築と学習:Webページの情報を活用
「タブレット タイムレコーダー」は製品ページのコンテンツが充実しているため、それをそのままAIチャットボットの学習ソースとして活用することにしました。製品ページの中にはチャットボットへ読み込ませる必要のない情報もあるため、
まずは対象ページを選定し、製品の基本情報・操作ガイド・設定方法・Q&Aページなど、チャットボットにとって意味のある情報をピックアップ。
AIチャットボットの管理画面から、対象ページのURLを指定して学習させました。
次に、AIチャットボットの管理画面からシステムプロンプトを設定しました。
「システムプロンプト」とは、AIに「どう振る舞ってほしいか」を伝える指示文のことです。
ここでは以下のような工夫をしています。
- 親しみやすく丁寧、かつ簡潔な口調
- 学習ソース外の話題には回答しない制限
- 回答内に参考URLを積極的に含める方針
試験運用:社内全体でフィードバック
AIチャットボットが動き始めたら、まずは社内での試験利用を実施しました。製品サポートへの問い合わせ履歴をもとに質問を入力し、回答の精度や分かりやすさをチェック。
また、社内全体にも呼びかけを行って実際にAIチャットボットを触ってもらい、意見や改善点を収集しました。
「この話題についてはしっかり回答できてGood!」
「ここはうまく回答できていないので補足が必要そう」
など、社内で挙がったフィードバックを元に、システムプロンプトや学習データの調整を行いました。
実装:見た目と導線にもひと工夫
実際のWebページに組み込む段階では、チャットボタンの配置位置やデザインについても議論がありました。Webページのデザインから浮きすぎず、でもしっかり目に入るように、ボタンの位置やアイコンのデザイン、チャット画面の配色などを調整。
こうしたちょっとした工夫で、ユーザーが自然と「使ってみようかな」と思ってもらえるUIを目指しました。
運用:使いながら育てていく
生成AIは一度作って終わりではなく、使いながら学習させていく仕組みです。例えば、稼働後「AIでは回答できません」という返答が思ったより多く、精度の面で課題が見えてきました。
調査の結果、曖昧な表現や誤字のある質問にうまく対応できていないことが判明。
そこで、すぐに「わかりません」と断定せずに、質問の意図をくみ取って関連する情報を返せるよう、システムプロンプトを見直して改善しました。
このように、導入後もユーザーからの入力内容や回答の質を見ながら、プロンプトや学習データの改善を継続しています。
また、AIが答えられなかった話題から「Webページ上に不足している情報」が明らかになることもあり、Webコンテンツの拡充にもつながっています。
おわりに:技術を「使ってみる」ことの面白さ
今回のAIチャットボット導入は、技術的に大規模な取り組みではありませんでしたが、
「自分たちのプロダクトにAIをどう活用できるか」という観点で、多くの実践的な知見が得られました。
AIに限らず、新しい技術に興味がある学生やエンジニアの方にとって、
こうした取り組みが少しでも刺激や参考になれば嬉しいです。
2025.06.10