「CO2換気システム『BCS』」について
今回は、私たち2年目の2人が、1年目の時に中心となって取り組んだ「CO2換気システム『BCS』」について紹介します。
BCSは簡単に言うと、「室内のCO2濃度を計測し、濃度に応じて自動で換気を行う装置」です。
先日、本番機が完成し、現在はオフィスで稼働しています。
BCSを作成する中で、図面作成やレーザー加工、プログラミング、組み上げなど、様々な経験をしました。
この記事では、図面作成から本番機完成までの流れを、実際の写真を交えて紹介していきます!
1.導入
– 導入・起こり
コロナ禍の2021年、オフィスでの換気の重要性が高まっていました。そのような中、会長より「自動で換気扇を制御するシステムを作ってみては?」という依頼を技術グループリーダーが受けました。当時1年目だった、私たちの2つ上の先輩に白羽の矢が立ち、誕生したのが、「CO2換気システム『BCS』」です。
このように、ネオレックスには、社員がなんでも自分たちで作ってしまうカルチャーがあります。
– BCSの由来
「Bye Bye CO2 System」の頭文字を取って「BCS」と名づけられました。
実は、弊社の旧サービス名「バイバイ タイムカード」にもかかっています。
※2023年8月に「バイバイ タイムカード」は「キンタイミライ」へとリブランディングしました。
– BCSでできること
- 室内のCO2濃度を計測し、表示・記録する
- 濃度に応じて換気扇のON/OFFを制御する
- ディスプレイに、CO2量と時刻を表示する
- 状況に合わせてLEDリングが光る
– 仕組み
①ESP32:プログラムを書き込んでBCS全体の制御を行う
②CO2センサ(MH-Z14B):CO2量を測定する
③NeoPixel Ring:換気時にかっこよく光るLEDリング
④ディスプレイ(7segment):CO2濃度や時間、Modeを表示する
⑤ソリッドステートリレー(SSR-25DA):換気扇の電源とつながっている。ここの挙動で換気扇のON/OFFが切り替わる
– プロトタイプ(試作機)
私たちの2つ上の先輩メンバーが、1年目のときに次の写真のようなプロトタイプを作成しました。
今回は、プロトタイプ作成時のフィードバックを踏まえ、新たに本番機としてBCSを完成させました。プロトタイプ作成に関わっていた先輩メンバーにも、様々な場面で助けていただきました。
プロトタイプ(試作機)
2.図面作成・アクリル板加工
まずは外部設計です。
図面を作成し、アクリル板の加工を行いました。
– 図面作成
試作機とは使う部品や配置が変わったため、図面を書き直しました。
初めての図面作成で、慣れるまで時間がかかりましたが、配置や適切な穴の位置を考えながら図面を書くのは、思った以上に楽しかったです。
実際に作成した図面
– レーザー加工
その後、レーザー加工機械で、アクリル板に穴を空けました。
ボタンを押すと機械が動いて、レーザーで穴が開いていくところを見ることができて面白かったです。自分で書いた図面通りに穴が空いていくのは感動的でした!
レーザー加工の様子
レーザー加工したアクリル板
3.プログラミング
外部設計だけでなく、内部のプログラム部分に関しても設計を行いました。
– LEDリングの導入
今回、本番機を作るにあたり、試作機にはなかったNeoPixel Ring(以下、LEDリング)の導入を行いました。導入のきっかけは、換気していることを分かりやすく示したいという希望と、そして・・・単純にカッコいいからです。
LEDリングを光らせるためにはプログラムから制御する必要があります。
従来のコードでは、LEDリングの制御には対応していないため、全体的に手直しをする必要がありました。
具体的に行った手順は以下です。
- LEDリングに関する設定をする
- プロトタイプにインターフェース回路とLEDリングを増設(ハード側)
- プログラム側からピンを指定、LEDリングのライブラリのインストール(ソフト側)
- 内部仕様を検討する
- ライティングパターンを決めるモードを追加
- モード数が多くなるので、一定時間後に自動でホームに戻る機能を追加
- 様々なライティングパターンを考えたり、調べる
- 実際にコードを書く
- 何回も試行錯誤し、およそ300行追加しました
⇒七色に光る、尾を引くように回る、シアターチェイスなど
ライティングパターンを選択するモードから、3種類のパターンを切り替える様子
– ライトに複数のLEDパターン
LEDリングは60個のライトから構成されており、それぞれに色情報(RGBカラーコード)を持っています。高い輝度の情報を送ると明るく、低い輝度の情報を送ると暗く光るため、ライト1には明るい緑、ライト2には少し明るい緑… のように情報を送って光の減衰を表現しました。
また、ライトに色情報を送る頻度・位置を任意に変化させることで、上記のアニメーションのような、尾を引くような光の回転を表現しています。
三角関数や対数関数をロジックに組み込むことで、Windowsのロード中のアニメーションを再現しているのが小さなこだわりです。
ライティングパターンのプログラムコードの例
LEDリングのプログラミングでは、プログラムをした結果が現実のライトにすぐに反映されるため、ハードウェアとプログラミングが連動する感動をたくさん味わうことが出来ました。また、社内の技術リーダーや、ベテランメンバーにたくさんフィードバックやアイデアをもらうことができたことも、とてもいい経験になりました。
フィードバックやアイデアの例:
- ライトの減衰は等差的ではなく、等比的のほうがいいんじゃない?
- 無換気時はCO2濃度計にしたらどう?
- 時計の機能も付けちゃおう!
などなど…
4.本番機組み上げ・設置
各部品が揃い、内部のプログラミング仕様も固まったところで、ついに本番機の組み上げに取り掛かっていきます。
– はんだ付け・配線
まずははんだ付けです。
上記の実体配線図を、技術グループのリーダーに作成していただきました。この回路を組むために、合計100箇所以上、細かいはんだ付けをする必要がありました。
中学校の技術の授業以来のはんだ付けに必死で取り組む図
初心者ながら根気強く進め、完成させた基板
他にも、以下のような様々なことに取り組みました。
各所に管理しやすくなる工夫を施しています。
- モードやライティングパターンなどを切り替えるための、操作スイッチの作成
- メンテナンス等で表面のアクリル板を取り外し可能とするために、配線はコネクターでの接続とした
- どの装置への配線か分かりやすくするために、基板上にピンヘッダを配置し、各装置への配線を集合させた
- 配線やピン配置の間違いを起こりにくくするため、ブレッドボード(はんだ付け不要の実験基板)と同じ配線・ピン配置ができる「ユニバーサル基板」の使用
– 組み上げ
はんだ付けした基板やスイッチ、各パーツを配線し、組み上げていきます。
組み上げの際、特に苦労したのが下記2点です。
①LEDリングの、表面のアクリル板の内側への固定方法
図面作成の段階では、LEDリングの固定方法を決めておらず、組み上げの際に苦戦しました。
身近な道具で実現できるのでは?ということで、アクアリウム用の黒い発泡スチロールで底上げをして解決しました。発泡スチロールをやや厚めに切ったことで、アクリル板にLEDリングが押し付けられるようになり、両面テープだけの固定よりも強度を増しています。
発泡スチロールとアクリル板でLEDリングを固定
②通電しない!?
いざ配線してスイッチをONにしてみましたが、通電しませんでした。原因を探るためにオシロスコープを用いました。オシロスコープは、電気信号を波形としてグラフィカルに表示できる機器です。
結果として原因は、配線間違いとはんだ不良の2つでした。どちらもやり直し、再度オシロスコープで確認し、今度こそ通電させることができました。
ちなみに、ネオレックスでは、もともとハードウェア開発を行なっていたこともあり、30年以上前からオシロスコープがあったそうです。マイクロバーコードの開発などで使用していました。
技術リーダーがオシロスコープを使って原因究明中
– 設置
組み上げが終わり、ついに本番機が完成しました。あとはオフィスに設置するだけです。
設置場所は熱田神宮の目の前にある、NX神宮ビルです。
ドリルで壁に穴を空けるという、貴重な経験をすることができました。
5.まとめ
– やってみたいを、やってみよう
BCSの制作は、初めての体験の連続でしたが、先輩メンバーにたくさん助けてもらいつつ、いろいろ試行錯誤をして、完成に辿り着くことができました。
また、入社1年目にも関わらず、幅広く携わって制作を進めることができました。色々なことにチャレンジでき、とても良い経験になりました。
ネオレックスでは、「やってみたいを、やってみよう」という考え方を大切にしています。たとえ初心者でも、手を挙げて、色々なことに挑戦できた良い例だと思います。
完成後、七色に光り輝くBCS
– 今後の展望
BCSは現在も、神宮ビルを換気するために稼働中です。
- カッコいい!
- 換気中に光が回転するのが面白い!
- 小型化してほしい
- 数字のディスプレイが大きい方が良い
など、様々なフィードバックがありました。
また、ネオレックス社内で「うちの部屋にもBCSが欲しい!」という要望が既に挙がっています。今年入ってきた新人も巻き込み、今度は教える側として、よりかっこいい2号機、3号機を制作をしていきたいです。
2024.07.25